更新履歴(3件・最終更新 2026年08月02日)
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- 外部レビュー(1283件)への対応として本文を更新しました。個々の変更内容は、この下の履歴を参照してください。
- 6か条の表に「まずこれ(無料で今日からできること)」の列を追加しました(ガイドライン本文の記載ではなく補足である旨を明記しています)。SECURITY ACTIONの申込み手順、SCS評価制度がまだ検討・制度設計の段階であることの時点明記、段階図への費用感と期間感の注記、誰がどこから読むかのガイドを追加し、順位の表記を関連記事と一致させました。
- 初版公開
この記事を引用する(DOI: 10.5281/zenodo.21590068)
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小村 豪(2026)「中小企業のセキュリティ対策、何から始めるか ── IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版の歩き方」合同会社小村ソフト. https://doi.org/10.5281/zenodo.21590068 https://staging.comcomponent.com/blog/ipa-sme-security-guideline-v4/
- DOI(最新版)
- 10.5281/zenodo.21590068
- DOI(この版)
- 10.5281/zenodo.21733032
「取引先からセキュリティ対策についてのチェックシートが送られてきたが、何をどこまでやればよいのか分からない」
「セキュリティが大事なのは分かっているが、専任の担当者を置く余裕はない」
「対策と言われても、何にいくらかかるのか見当がつかず、手を付けられていない」
中小企業のセキュリティ対策の相談は、たいていこの形で始まります。
実は、この「何から、どこまで」に答えるための公的な手引きがあります。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公開している中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインです。2026年3月27日には、約3年ぶりの大きな改訂となる第4.0版が公開されました。
この記事では、第4.0版の内容をもとに、専任の担当者がいない会社がセキュリティ対策をどの順番で進めればよいのかを整理します。
1.まず結論
ガイドライン第4.0版が示している進め方を先にまとめます。
- 最初にやるのは高価な製品の導入ではなく、「情報セキュリティ6か条」。企業規模に関わらず必ず実行すべき基本対策で、大きな費用はかからない
- 次に、付録の「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」(25項目)で自社の現状を把握し、できていない項目から改善する
- 取り組みを始めたら、IPAの「SECURITY ACTION」で自己宣言する(無料)。取引先への説明材料になり、公的支援制度の要件にもなっている
- そのうえで、基本方針の作成、規程の整備、インシデント対応体制へと段階的に進む
- 経営者には「対策は経営者のリーダーシップで進める」「委託先の対策まで考慮する」など、担当者に任せきりにしない役割がある
一言でいうと、「一気に完璧を目指さず、決められた順番で、できるところから段階的に」がこのガイドラインの設計思想です。
この記事の知識マップ
IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版は、専任の担当者がいない中小企業向けに、情報セキュリティ6か条の実行から始め、5分でできる自社診断25項目で現状を把握し、基本方針の整備やSECURITY ACTIONの自己宣言へと段階的に進める道筋を示す。第4.0版ではランサムウェアとサプライチェーン被害の拡大を踏まえ、6か条にバックアップ(取得・保管・復旧確認の3点セット)が加わり、自社診断にはVPN機器の脆弱性やウェブサイト改ざんへの対策項目が追加された。SECURITY ACTIONの一つ星は6か条への取り組み宣言、二つ星は自社診断と基本方針の公開を前提とする、無料の自己宣言制度である。
flowchart LR
accTitle: 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインの知識マップ
accDescr: IPA中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版が示す情報セキュリティ6か条・自社診断・SECURITY ACTIONという段階的な進め方と、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃への対応関係を示す図
sme_security_guideline["中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン"]
security_6_articles["情報セキュリティ6か条"]
ipa["IPA(独立行政法人情報処理推進機構)"]
self_diagnosis_25_items["5分でできる!情報セキュリティ自社診断"]
security_basic_policy["情報セキュリティ基本方針"]
management_leadership_principle["経営者の3原則と重要7項目の取組"]
backup_practice["バックアップの3点セット(取得・保管・復旧確認)"]
windows_update["Windows Update"]
multi_factor_authentication["多要素認証"]
password_manager["パスワードマネージャー"]
password_reuse["パスワードの使い回し(リスト型攻撃)"]
security_action["SECURITY ACTION"]
gbizid["GビズID"]
ransomware["ランサムウェア"]
scs_evaluation_system["SCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)"]
supply_chain_attack["サプライチェーンや委託先を狙った攻撃"]
vpn_vulnerability["VPN機器の脆弱性を突いた侵入"]
website_defacement["ウェブサイトの改ざん"]
ipa -->|"実装を担う"| sme_security_guideline
sme_security_guideline -->|"利用する"| security_6_articles
sme_security_guideline -->|"利用する"| self_diagnosis_25_items
sme_security_guideline -->|"利用する"| security_basic_policy
sme_security_guideline -->|"利用する"| management_leadership_principle
security_6_articles -->|"利用する"| backup_practice
security_6_articles -->|"利用する"| windows_update
security_6_articles -->|"利用する"| multi_factor_authentication
security_6_articles -->|"利用する"| password_manager
password_manager -->|"防止する"| password_reuse
sme_security_guideline -->|"利用する"| security_action
security_action -->|"前提とする"| gbizid
security_action -.->|"前提とする"| security_6_articles
security_action -.->|"前提とする"| self_diagnosis_25_items
security_action -.->|"前提とする"| security_basic_policy
backup_practice -->|"軽減する"| ransomware
sme_security_guideline -->|"利用する"| scs_evaluation_system
scs_evaluation_system -.->|"軽減する"| supply_chain_attack
self_diagnosis_25_items -->|"軽減する"| vpn_vulnerability
self_diagnosis_25_items -->|"軽減する"| website_defacement
図の実線は常に成り立つ関係、破線は条件付きの関係です(成立条件は詳細ページの各関係の説明に記載)。関係すべての一覧(全20件、根拠・確度つき)と主要概念の定義は知識マップ詳細ページにまとめています。データ: JSON-LD / Turtle
2.「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」とは
このガイドラインは、中小企業が重要な情報を漏えい・改ざん・消失などの脅威から守り、事業継続への影響を防ぐための考え方と手順をまとめた文書です。初版は2016年11月に公開され、以来、中小企業向けセキュリティ対策の事実上の標準として使われてきました。個人事業主や小規模事業者も対象に含まれています。
構成は大きく3つに分かれます。
| 部 | 対象読者 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1部 経営者編 | 経営者 | 対策を怠ったときの不利益、経営者が負う責任、認識すべき3原則と重要7項目の取組 |
| 第2部 実践編 | 責任者・担当者 | 情報セキュリティ6か条から本格的な対策まで、段階的な実務の進め方 |
| 付録1〜8 | 実務担当者 | 自社診断シート、基本方針・規程・資産管理台帳のサンプル、クラウド利用・インシデント対応の手引きなど |
本編は約70ページありますが、後述するとおり最初から通読する必要はありません。自社の段階に合った場所から使い始められる作りになっています。
読み方ガイド ── 誰が、どこから読むか
立場によって、最初に開くべき場所は違います。次の順で読めば、自分に関係のない部分を飛ばせます。
| 立場 | まず読む | 次に手を付ける |
|---|---|---|
| 経営者・役員 | 第1部 経営者編(3原則と重要7項目の取組) | 6か条を全社に指示し、予算と担当者を決める |
| 情シス・総務の担当者(兼任を含む) | 第2部 実践編の「できるところから始める」 | 付録3の自社診断25項目。できていない項目から改善する |
| 社内ルールを整備する担当者 | 第2部 実践編の「組織的な取り組みを開始する」 | 付録2(基本方針)と付録5(関連規程)のサンプルを自社向けに直す |
| クラウド・テレワークの相談を受けている担当者 | 付録7(クラウドサービス安全利用の手引き) | 「より強固にするための方策」 |
| 取引先のチェックシートへの回答を求められている担当者 | 付録3の自社診断で現状を把握 | SECURITY ACTIONの自己宣言(7章) |
つまり、経営者が読むのは第1部だけ、担当者が読むのは実践編と付録、というのが基本の分担です。全員が全部を読む必要はありません。
第4.0版で何が変わったか
第4.0版への改訂では、第3.1版(2023年4月)以降の環境変化として、次の3点が挙げられています。
- ランサムウェアによる被害が情報漏えいにとどまらず、事業活動の停止にまで拡大した
- 国内外でサプライチェーンを介した被害が広がり、取引網全体で対策を進める必要性が高まった
- 中小企業の内部でセキュリティ対策を推進する人材が著しく不足している
これを受けて、「情報セキュリティ5か条」に「バックアップを取ろう!」を加えた6か条への拡充、経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室が検討を進めるSCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)を踏まえた組織的対策・技術的防御策の整理、セキュリティ人材の確保・育成を支援する実践ガイドブック(付録1)の追加などが行われました。
このSCS評価制度は、第4.0版が公開された2026年3月時点では検討・制度設計が進められている段階です。すでに運用が始まっていて、いま申請できる認証制度ではありません。ガイドラインが行っているのも「制度が求めることになる対策を先取りして整理する」ことであり、「この制度を取得しなさい」ではありません。取引先から評価制度の話が出たときに慌てないよう、最新の状況は経済産業省の公表資料で確認してください。
「バックアップ」と「サプライチェーン」という改訂の2本柱は、そのまま今の中小企業が直面している脅威を映しています。ランサムウェアと取引先経由の攻撃は、IPAが毎年公表する「情報セキュリティ10大脅威」の組織編でも、2026年版でそれぞれ1位(11年連続)・2位(8年連続)を占めています(詳しくは情報セキュリティ10大脅威2026の解説記事をご覧ください)。
3.経営者編 ── 対策は「担当者の仕事」ではない
第1部の経営者編は、技術の話をほとんどしません。書かれているのは、対策を怠ると何を失うか(事業停止、信頼の失墜、損害賠償)、経営者がどんな法的責任を負うか(個人情報保護法の安全管理措置、会社法上の忠実義務など)、そして経営者は何をすべきか、です。
経営者が認識すべき3原則として、次が挙げられています。
- 情報セキュリティ対策は経営者のリーダーシップで進める
- 委託先の情報セキュリティ対策まで考慮する
- 関係者とは常に情報セキュリティに関するコミュニケーションをとる
そのうえで、実行すべき「重要7項目の取組」として、組織全体の対応方針を定める、予算や人材などを確保する、必要と考えられる対策を検討させて実行を指示する、対策の適宜の見直しを指示する、緊急時の対応や復旧のための体制を整備する、委託や外部サービス利用の際にセキュリティに関する責任を明確にする、最新動向を収集する、という経営者の仕事が示されています。
現場の従業員から見ると、セキュリティ対策は利便性が下がる面倒な作業に映りがちです。だからこそ「経営者が判断して意思決定し、主導する」ことが第一の原則に置かれています。担当者に「なにかやっておいて」と任せるだけでは機能しない、というのがこのガイドラインの一貫した立場です。
4.実践編 ── 3段階で進める
第2部の実践編は、「できるところから始める」→「組織的な取り組みを開始する」→「本格的に取り組む」という段階構成になっています。
段階1: できるところから始める ── 追加費用はほぼ不要/今日から着手できる
情報セキュリティ6か条を実行する
↓
段階2: 組織的な取り組みを開始する ── 追加費用はほぼ不要/診断は25項目で5分
情報セキュリティ基本方針を作って周知する 基本方針は付録2のサンプルを直して作る
「5分でできる!自社診断」(25項目)で実施状況を把握する
できていない対策を決めて周知する
↓
段階3: 本格的に取り組む ── ここから工数がかかる/人と時間の確保が要る
規程の作成、資産管理、攻撃の防御・検知、
点検と改善、インシデント対応体制、取引先の管理
↓
さらに: より強固にするための方策 ── 必要に応じて。製品・外部サービスの費用が絡む
リスク分析、ウェブサイト・クラウド・テレワークの対策など
重要なのは、段階1と段階2までは、特別な知識も大きな費用もほとんど必要ないことです。6か条はいずれもWindowsやクラウドサービスの標準機能と運用の見直しで実行でき、自社診断はチェックシートに答えるだけ、基本方針と規程は付録のサンプルを直して作ります。冒頭の「何にいくらかかるのか見当がつかない」という問いへの答えは、少なくとも段階2までは「ほぼゼロ円」です。費用と工数が本格的に必要になるのは段階3からで、「予算が付かないから何もできない」ではなく、「予算がなくてもここまでは今日から始められる」という設計になっています。
5.情報セキュリティ6か条 ── 最初の一歩の中身
段階1の「情報セキュリティ6か条」は、企業の規模に関わらず必ず実行すべき基本対策です。
| 項目 | 何をするか | まずこれ(無料で今日からできること) | |
|---|---|---|---|
| 1 | OSやソフトウェアは常に最新の状態にしよう! | 修正プログラムを適用する、または最新版を利用する。古いまま放置すると、解決済みの弱点を突かれる | Windows Updateの自動更新が有効か全台で確認する。ブラウザ・PDFリーダー・Officeなど、個別に更新するソフトの自動更新も確認する |
| 2 | ウイルス対策ソフトを導入しよう! | 導入したうえで、ウイルス定義ファイルを常に最新に保つ | Windows標準のMicrosoft Defenderウイルス対策が有効かを確認する。他社製品を入れている端末は、契約切れで定義更新が止まっていないかを見る |
| 3 | パスワードを強化しよう! | 「長く」「複雑に」「使い回さない」。流出したID・パスワードの悪用による不正ログインを防ぐ | パスワードマネージャー(ブラウザやOSの標準機能でも可)で、サービスごとに違う長いパスワードを生成・保管する。対応しているサービスは多要素認証を有効にする |
| 4 | 共有設定を見直そう! | クラウドサービスやネットワーク複合機の設定を確認し、無関係な人が見られる状態をなくす | クラウドストレージの共有リンクが「リンクを知っている全員」になっていないかを棚卸しする。複合機・NASの共有フォルダーに、誰でも入れる設定が残っていないかを確認する |
| 5 | バックアップを取ろう! | 故障・誤操作・ウイルス感染でデータが消えたり暗号化されたりしても、事業を継続できるようにする | 外付けドライブやクラウドへ複製し、実際に1ファイル戻してみる。複製先の外付けドライブは、取り終わったらPCから外しておく |
| 6 | 脅威や攻撃の手口を知ろう! | 攻撃の手口は年々変わる。IPAなどが発信する最新情報を知り、だまされない備えをする | IPAの「重要なセキュリティ情報」やJPCERT/CCの注意喚起を購読し、届いたら社内へ回覧する担当を決める |
4列目は、ガイドライン本文の記載ではなく、追加費用なしで着手できる具体手段として補足したものです。
第4.0版で加わった5番目の「バックアップ」については、取得(対象と間隔を決める)、保管(場所と世代管理と期間を決める)、復旧(計画を立て、正しく戻せることを確認する)の3点セットで運用することが示されています。ランサムウェアで元データもろとも暗号化されないよう本番環境から切り離して保管することと、「取ってあるはずのバックアップが実は戻せない」を防ぐ復旧確認まで含めて、初めて対策として成立します。
どの項目も、書いてしまえば当たり前に見えます。しかし実際の被害の多くは、この当たり前が徹底されていないところから起きています。まずこの6項目を、経営者のトップダウンで全社に徹底することが出発点です。
6.5分でできる自社診断と、二段階目からの組織的な取り組み
段階2の中心になるのが、付録3の「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」です。25項目の設問に「実施している/一部実施している/実施していない/分からない」で答えていくだけで、自社の現状と弱点が見える化されます。
第4.0版では診断の対策例が見直され、「外部から内部ネットワークへの不要な通信を遮断する」「ウェブサイトを安全に運用する」といった、昨今の侵入経路を踏まえた項目も加わりました。VPN機器の弱点を突いた侵入や、放置されたWebサイトの改ざんは、実際に中小企業で被害が続いている経路です(Webサイト側の対策は、別記事IPA「安全なウェブサイトの作り方」の使い方で詳しく扱います)。
診断の結果は、点数を競うためのものではありません。「できていない項目のうち、自社の業務にとってリスクが大きいものから直す」という優先順位付けの材料として使います。
7.SECURITY ACTION ── 取り組みを「見える化」する無料の制度
取り組みを始めたら、あわせて活用したいのがSECURITY ACTIONです。中小企業が自ら情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度で、取り組み段階に応じて「一つ星」「二つ星」のロゴマークを無料で使用できます。
| 宣言の内容 | |
|---|---|
| ★ 一つ星 | 情報セキュリティ6か条に取り組むことを宣言する |
| ★★ 二つ星 | 「5分でできる!自社診断」で自社の状況を把握したうえで、情報セキュリティ基本方針(付録2にサンプルあり)を定めて外部に公開し、対策に取り組むことを宣言する |
自己宣言なので審査はありませんが、その分すぐに始められます。名刺やWebサイトにロゴを掲載すれば取引先への説明材料になりますし、IT導入補助金をはじめとする公的支援制度で宣言が申請要件とされることもあります。
宣言の手続きは、IPAの自己宣言の申込方法のページに次の流れが示されています。
- 取組目標を決める(一つ星か二つ星か)
- GビズIDを取得する(法人・個人事業主はプライムアカウント。gBizIDのサイトから申請します)
- 申込フォームに入力する(個人情報の取扱いへの同意、ロゴマーク使用規約への同意、事業者情報、取組内容の選択)
- 完了メールを受け取る(自己宣言IDとロゴマークの使用方法が通知されます)
- ロゴマークをダウンロードする(任意。SECURITY ACTION管理システムにGビズIDでログインし、マイページから取得します)
IPAは、GビズIDの取得からロゴマークの使用まで最短1日で実施できるとしています。なお、申込みの窓口は2026年4月1日に公開された「SECURITY ACTION管理システム」に一新されているため、以前に宣言した記憶がある方も、現在の手順を上記のページで確認してください。一つ星は「これから6か条に取り組むことを宣言する」ものなので、対策が完了していなくても申し込めます。
取引先からセキュリティチェックシートを受け取って戸惑っている段階の会社にとっては、「ガイドラインに沿って6か条と自社診断から取り組んでいます。SECURITY ACTIONも宣言しています」と答えられる状態を作ることが、現実的で誠実な第一歩になります。
8.付録は「ひな形集」として使える
このガイドラインの実務的な価値は、付録にあると言ってもよいくらいです。第4.0版には次の8点が付属し、いずれもIPAのページから無償でダウンロードできます。
- 付録1: 中小企業のためのセキュリティ人材確保・育成の実践ガイドブック(第4.0版で新規追加)
- 付録2: 情報セキュリティ基本方針(サンプル)
- 付録3: 5分でできる!情報セキュリティ自社診断
- 付録4: 情報セキュリティハンドブック(ひな形)
- 付録5: 情報セキュリティ関連規程(サンプル)
- 付録6: 資産管理台帳(サンプル)
- 付録7: 中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き
- 付録8: 中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き
基本方針も規程も資産管理台帳も、ゼロから書く必要はありません。サンプルを自社に合わせて修正するのが前提の作りです。社内ルールの整備で止まっている会社は、付録2と付録5から手を付けると早く進みます。
なお、日々の運用に近いところでは、パスワード付きZIPをメールで送る、いわゆるPPAPの見直し(なぜPPAPはダメなのか)や、廃棄するPCからの情報漏えい対策(Windows PC廃棄前のチェックリスト)のような個別テーマも、このガイドラインの考え方と地続きです。
まとめ
IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版のポイントを整理します。
- 2026年3月27日公開。ランサムウェアによる事業停止、サプライチェーン経由の被害、人材不足という環境変化を反映した改訂
- 進め方は段階式。まず情報セキュリティ6か条、次に25項目の自社診断、そのうえで方針・規程・体制の整備へ
- 6か条には「バックアップを取ろう!」が加わった。取得・保管・復旧確認までがバックアップ
- 経営者には3原則と重要7項目の取組があり、担当者に任せきりにしない
- SECURITY ACTIONの自己宣言(無料)で取り組みを見える化でき、公的支援制度の要件にもなっている
- 付録8点はひな形集としてそのまま実務に使える
セキュリティ対策は「何をすればよいか分からない」が最大の障壁ですが、その部分は公的なガイドラインがすでに答えを用意してくれています。あとは、自社の環境に当てはめて実行する段階です。
自社の環境に当てはめる段階でお困りの方へ
6か条の「OSやソフトウェアを最新の状態に」を実行しようとすると、「古い業務アプリが新しいOSで動かないので更新できない」という壁に突き当たる会社が少なくありません。また、自社診断で見つかった課題をどの順番で直すかは、業務システムの構成によって変わります。
合同会社小村ソフトでは、Windows業務アプリやWebシステムの開発・保守の経験をもとに、更新の妨げになっている既存ソフトの改修や、対策の優先順位付けのご相談をお受けしています。「診断はやってみたが、ここから先は技術の話になって進まない」という段階でも、現状の確認からご相談いただけます。
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この記事のテーマについて、相談時によくある質問をまとめています。
- 情報セキュリティ6か条とは何ですか?
- IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版で示されている、企業の規模に関わらず必ず実行すべき基本対策です。①OSやソフトウェアは常に最新の状態にする、②ウイルス対策ソフトを導入する、③パスワードを強化する、④共有設定を見直す、⑤バックアップを取る、⑥脅威や攻撃の手口を知る、の6項目です。第3.1版までは5か条でしたが、ランサムウェア被害の拡大を踏まえて「バックアップを取ろう!」が加わり6か条になりました。
- SECURITY ACTIONの一つ星と二つ星は何が違いますか?
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- 第4.0版は第3.1版から何が変わりましたか?
- 2026年3月27日に公開された第4.0版では、ランサムウェア被害による事業停止、サプライチェーンを介した被害の拡大、セキュリティ人材の不足という環境変化を踏まえた見直しが行われました。具体的には、「情報セキュリティ5か条」に「バックアップを取ろう!」を加えて6か条に拡充、経済産業省などが検討を進めるSCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)を踏まえた対策の整理、セキュリティ人材の確保・育成を支援する実践ガイドブックの付録追加などが行われています。