更新履歴(3件・最終更新 2026年08月02日)
この記事に加えた変更の記録です。アーカイブした更新前のバージョンは、DOI付きの固定URLから読めます。
- 記事の冒頭に「この記事の知識マップ」節を追加しました。本文で扱っている概念とその関係を、要約・図・詳細ページへのリンクにまとめたものです。本文の主張は変えていません。
- 外部レビュー(1283件)への対応として本文を更新しました。個々の変更内容は、この下の履歴を参照してください。
- 冒頭と本文に、許可された環境でのみ調査するという注意を追加しました。判定した形式を検証する手順(`hashlib`での照合、`openssl passwd`での再計算)を拡充し、掲載している例が実際に再現できることを手元で確認しています。hashcatのモード番号表、Base64の文字数の読み方、用語ミニ辞書も追加しました。あわせて「NTLM系」としていた箇所を「NTハッシュ(MD4ベース)」に直し、両者を同じものとして扱う誤りを説明する節を新設しました。
- 初版公開
この記事を引用する(DOI: 10.5281/zenodo.21589772)
この記事はZenodoにアーカイブされています。常に最新版へ解決されるDOIと、いま表示している版に固定されたDOIの両方を下に示します。
小村 豪(2026)「ハッシュ文字列から方式を見分ける実務手順」合同会社小村ソフト. https://doi.org/10.5281/zenodo.21589772 https://staging.comcomponent.com/blog/2026/04/08/000-hash-format-identification/
- DOI(最新版)
- 10.5281/zenodo.21589772
- DOI(この版)
- 10.5281/zenodo.21732787
ログや DB に残っている 5f4dcc3b5aa765d61d8327deb882cf99 や $2b$12$... のような文字列を見て、「これは何のハッシュか」を判定したい場面はかなりあります。既存システムの移行、認証方式の調査、ログ解析、他社システム連携では、ここで止まることが珍しくありません。
ただ、ここで危ないのは 長さだけで即断すること です。
64 桁の 16 進文字列を見て「SHA-256 ですね」と言い切るのは早すぎます。SHA3-256、SHA-512/256、BLAKE2s-256、BLAKE3 の既定 32-byte 出力でも同じ長さになりえます。逆に、$2b$ や $argon2id$ のように 接頭辞やパラメータまで含む保存形式 は、文字列だけでかなり高い精度で判定できます。
この記事では、hash という言葉を広めに使い、MD5 / SHA-2 / SHA-3 のようなメッセージダイジェストだけでなく、bcrypt / scrypt / Argon2 / PBKDF2 のような パスワード保存用の文字列表現 も含めて扱います。
内容は 2026 年 4 月時点で公開されている RFC、NIST、Linux crypt(5)、Apache、Django、Spring Security などの公式資料をもとに整理しています。
対象読者は、既存システムの移行、認証方式の調査、ログ解析を担当していて、手元にある「ハッシュらしき文字列」が何なのかを切り分けたい方です。前提知識は、16 進表記と Base64 が何かを知っている程度で足ります。
なお、この記事の手順は 自分たちが管理している環境、または調査を明示的に許可された環境の文字列 に対してのみ使ってください。他人のアカウントのパスワードハッシュを取り出す、権限のないシステムのハッシュを解析するといった行為は、目的が調査であっても正当化されません。後半で挙げる検証コマンドも、テスト用アカウントや自分で作ったサンプルで試すことを前提にしています。
目次
- まず結論
- 一目で見る判定表
- 実務での判定手順
- よくある誤判定
- 100% 確定したいときの確認順
- まとめ
- このテーマがつながるサービス
- 参考資料
この記事の知識マップ
この記事は、ログやDBに残るハッシュ文字列の方式を見分ける手順を扱っており、bcryptやArgon2のように先頭に方式名を置くMCFやPHC string format系の保存形式は文字列だけでほぼ特定できる一方、プレーンな16進やBase64だけの文字列は長さと文字種から候補を絞ることしかできないと整理しています。sha256crypt・sha512crypt・md5cryptはいずれもcrypt(3)関数の出力形式でSHA-256・SHA-512・MD5を反復適用しており、openssl passwdで同じsaltを与えて再計算すれば形式を検証できます。また64桁の16進はSHA-256だけでなく複数のアルゴリズムが候補になるため長さだけでの断定は避けるべきであり、NTハッシュはMD5ではなくMD4をもとに計算される点でNTLMとも区別すべきだとしています。候補方式が分かったあとはhashcatのモード番号に翻訳して調査を進めます。
flowchart LR
accTitle: ハッシュ形式識別の知識マップ
accDescr: ハッシュ文字列の判定手がかりとして接頭辞ベースの保存形式であるMCF・PHC string formatと、文字種・長さだけによる推定がどう関係し、crypt(3)系のmd5crypt・sha256crypt・sha512crypt、bcrypt、Argon2などの具体的な形式や、NTハッシュとNTLMの違い、hashcatやopenssl passwdによる検証手段までを示す図
password_hash_string["パスワードハッシュ文字列"]
length_based_misidentification["長さだけによる誤判定"]
crypt_3_function["crypt(3)"]
modular_crypt_format["MCF(Modular Crypt Format)"]
phc_string_format["PHC string format"]
argon2["Argon2"]
bcrypt["bcrypt"]
sha256crypt["sha256crypt"]
sha512crypt["sha512crypt"]
md5crypt["md5crypt"]
sha_256["SHA-256"]
sha_512["SHA-512"]
md5["MD5"]
hex_encoding["16進表現(hex encoding)"]
nt_hash["NTハッシュ"]
md4["MD4"]
ntlm["NTLM"]
openssl_passwd["openssl passwd"]
hashcat["hashcat"]
pbkdf2["PBKDF2"]
scrypt["scrypt"]
ldap_scheme_prefix["LDAPスキームプレフィックス({SHA}等)"]
base64_encoding["Base64(RFC 4648)"]
sha_1["SHA-1"]
crypt_3_function -->|"利用する"| modular_crypt_format
phc_string_format -->|"の後継"| modular_crypt_format
argon2 -->|"利用する"| phc_string_format
bcrypt -->|"利用する"| modular_crypt_format
sha256crypt -->|"利用する"| crypt_3_function
sha512crypt -->|"利用する"| crypt_3_function
md5crypt -->|"利用する"| crypt_3_function
sha256crypt -->|"利用する"| sha_256
sha512crypt -->|"利用する"| sha_512
md5crypt -->|"利用する"| md5
hex_encoding -.->|"原因になり得る"| length_based_misidentification
modular_crypt_format -->|"防止する"| length_based_misidentification
nt_hash -->|"利用する"| md4
ntlm -->|"利用する"| nt_hash
sha512crypt -->|"で確認できる"| openssl_passwd
sha256crypt -->|"で確認できる"| openssl_passwd
md5crypt -->|"で確認できる"| openssl_passwd
md5 -->|"で構成できる"| hashcat
sha_256 -->|"で構成できる"| hashcat
sha512crypt -->|"で構成できる"| hashcat
bcrypt -->|"で構成できる"| hashcat
nt_hash -->|"で構成できる"| hashcat
pbkdf2 -->|"で構成できる"| hashcat
scrypt -->|"で構成できる"| hashcat
ldap_scheme_prefix -.->|"利用する"| base64_encoding
ldap_scheme_prefix -.->|"利用する"| sha_1
ldap_scheme_prefix -->|"防止する"| length_based_misidentification
図の実線は常に成り立つ関係、破線は条件付きの関係です(成立条件は詳細ページの各関係の説明に記載)。関係すべての一覧(全27件、根拠・確度つき)と主要概念の定義は知識マップ詳細ページにまとめています。データ: JSON-LD / Turtle
1. まず結論
先に結論だけ短くまとめておきます。
-
接頭辞や区切りがある保存形式 は、文字列だけでかなり特定しやすいです。 例:
$argon2id$...,$2b$...,$5$...,$6$...,{SHA}...,pbkdf2_sha256$... -
プレーンな 16 進文字列や Base64 だけ では、たいてい「候補を絞る」までです。 例:
32 hex = MD5 かもしれないが、MD4 や NT ハッシュ由来かもしれない -
文字種は長さと同じくらい重要 です。
+/=があれば RFC 4648 の Base64 らしい、.が入っていて$区切りならcrypt(3)系らしい、といった見分けが効きます。 -
100% 確定したいなら文脈が必要 です。
/etc/shadowなのか、.htpasswdなのか、Django のauth_userなのか、Spring Security なのかで話が変わります。
要するに、「文字列だけで特定できる方式」と「文字列だけでは候補群までしか分からない方式」は別物 です。 ここを分けて考えるだけで、調査の進み方が変わります。
2. 一目で見る判定表
表を読む前に、この記事で「形式の名前」として出てくる言葉を 4 つだけ整理しておきます。どれも似た文脈で使われますが、指しているものが違います。
| 用語 | フルスペル | 何を指すか |
|---|---|---|
crypt(3) |
- | Unix のパスワードハッシュ 関数 そのもの。C ライブラリの関数名で、man の 3 章(ライブラリ関数)に載っているのでこう書きます |
crypt(5) |
- | その関数が読み書きする 文字列フォーマット を説明した man ページ。man の 5 章(ファイル形式)で、$6$salt$hash のような書式はここに載っています |
| MCF | Modular Crypt Format | 「先頭に $id$ を置いて方式を示す」書き方の通称。単一の仕様書があるわけではなく、crypt(3) 系の実装が増える中で慣習として固まった呼び名です |
| PHC string format | Password Hashing Competition string format | MCF を整理し直した仕様。$argon2id$v=19$m=65536,t=3,p=4$salt$hash のように、バージョンとパラメータの書き方まで決めてあります |
ざっくり言うと、crypt(3) は関数、crypt(5) はその出力形式の仕様、MCF はその形式の通称、PHC string format はそれを明文化し直したもの です。以降の表で「PHC string format」「crypt 系」と書いてあるときは、この区別で読んでください。
2.1 接頭辞や形式マーカーでほぼ特定できるもの
表中の「判定の強さ」は、この意味で使っています。
- 強: 文字列だけでほぼ特定できる
- 中: 候補はかなり絞れるが、実装差異に注意がいる
- 弱: 長さや見た目だけでは断定できない
| 見た目の特徴 | まず疑う方式 | 判定の強さ | 補足 | 例 |
|---|---|---|---|---|
$argon2id$... |
Argon2id | 強 | PHC string format。v=, m=, t=, p= が続くことが多い |
$argon2id$v=19$m=65536,t=3,p=4$MDEyMzQ1Njc4OWFiY2RlZg$uKZLaN6muIyoyIYr5waqw3y+zaDbe9aLSPj6Ln/rbz4 |
$argon2i$... |
Argon2i | 強 | 同上 | $argon2i$v=19$m=65536,t=3,p=4$MDEyMzQ1Njc4OWFiY2RlZg$Kx1koF/7n8EytGJYTS5krh+ag+FlG5ksM4xOsjOSDvo |
$argon2d$... |
Argon2d | 強 | 同上 | $argon2d$v=19$m=65536,t=3,p=4$MDEyMzQ1Njc4OWFiY2RlZg$HLIGA+T1bwK8akx3LGOco+Df+PvxX6cIXhycO7O7t6c |
$2a$... / $2b$... / $2y$... |
bcrypt | 強 | 2 桁コスト + crypt 系 alphabet | $2b$12$9YQ2u/e5Y/ArOnG.gJKxK.0makLATcYLP1q.Nsabzrw7XErYCfoYO |
$1$... |
md5crypt | 強 | Unix 系の MD5 パスワード保存形式 | $1$vA7mQ9xZ$Erz32JUFnZ9991KdU5.N3. |
$5$... |
sha256crypt | 強 | plain SHA-256 ではない | $5$rounds=5000$N3v8Kx2Lq9Rt$uOTla5GAHaRH2aHlUSjkrZUBCuFiahQZ36O/seB39r3 |
$6$... |
sha512crypt | 強 | plain SHA-512 ではない | $6$rounds=5000$N3v8Kx2Lq9Rt$6LUcSUAELX3aC/.60pTB.TFLTQi1mOGRCwKqNCqtRSaXjorxj01HJ9oNni97Kci1uDt7a/Kn4t3OS20Dw/.vi1 |
$7$... |
scrypt (crypt 系) | 強 | Linux crypt(5) 系実装で見かける |
$7$CU..../....k2XAnEHBqQ1Ct2aMXFKNa/$y3Q0e/UlCHacIGWQshgvvz6UIbP.BCja.5BfVWP2Ml8 |
$y$... |
yescrypt | 強 | 新しめの Linux 系で見かける | $y$j9T$k2XAnEHBqQ1Ct2aMXFKNa/$OVYXzjlkiQpWT/F1CUE0JrvV4phLY8FB.ofDttnrSQ7 |
$apr1$... |
Apache APR1-MD5 | 強 | .htpasswd でよく見る |
$apr1$vA7mQ9xZ$ZE64.ohiyK11sPZmtnJZQ. |
{SHA}... |
SHA-1 digest の Base64 表現 | 強 | Apache / LDAP 系でよく見る | {SHA}VBPuJHI7uixaa6LQGWx4s+5GKNE= |
{SSHA}... |
salted SHA-1 | 強 | LDAP 系 | {SSHA}/OczD0GNNkOAUPbYhA3L9fjmcyBCbHVlTWVzYTQyIQ== |
{MD5}... / {SMD5}... |
MD5 / salted MD5 | 強 | LDAP 系 | {MD5}X03MO1qnZdYdgyfeuILPmQ=={SMD5}fOn1rOv4ZH0OrO/KT9H0fEJsdWVNZXNhNDIh |
pbkdf2_sha256$... |
PBKDF2-HMAC-SHA256 | 中〜強 | Django など、実装が形式名を前置している | pbkdf2_sha256$600000$N3v8Kx2Lq9Rt$CLxGB+zTiV1IdOt2y4m9JpaAONzHuRTOd96xKQwRQAs |
{bcrypt}$2b$... |
bcrypt | 強 | Spring Security の {id} ラッパー付き |
{bcrypt}$2b$12$9YQ2u/e5Y/ArOnG.gJKxK.0makLATcYLP1q.Nsabzrw7XErYCfoYO |
{pbkdf2}... / {scrypt}... |
実装ラベル付き方式 | 中〜強 | Spring Security など、アルゴリズム本体よりラッパー形式を見分ける | {pbkdf2}sha256$600000$Qmx1ZU1lc2E0MiE$4eNuai1qNkgs1kXz3+tBUMzAexVsSUz9SrQKEhbk0Cw{scrypt}ln=14,r=8,p=1$Qmx1ZU1lc2E0MiE$xAgBRhXbMtHB1UHUR0br5bI+1XdXWKbwauiFv5VRQBY |
この表のポイントは、先頭の数文字に意味がある形式は強い ということです。
とくに $...$ で区切られたものは、Unix crypt(3) / MCF / PHC 系の可能性が高く、長さより先に prefix を見たほうが早い です。
2.2 プレーンな 16 進 / Base64 の長さで候補を絞る表
こちらは prefix なしの「ただの digest 文字列」 を見るときの表です。
: や -、空白が混ざる表現は、まず区切りを取り除いて長さを数えます。
| 生バイト長 | 16 進文字数 | Base64 文字数 (= あり / なし) |
主な候補 | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 4 | 8 | 8 / 6 | CRC32 などのチェックサム | cbf43926 |
| 16 | 32 | 24 / 22 | MD5、MD4、NT ハッシュ(MD4 ベース) | 5f4dcc3b5aa765d61d8327deb882cf99 |
| 20 | 40 | 28 / 27 | SHA-1、RIPEMD-160 | da39a3ee5e6b4b0d3255bfef95601890afd80709 |
| 28 | 56 | 40 / 38 | SHA-224、SHA-512/224、SHA3-224 | d14a028c2a3a2bc9476102bb288234c415a2b01f828ea62ac5b3e42f |
| 32 | 64 | 44 / 43 | SHA-256、SHA-512/256、SHA3-256、BLAKE2s-256、BLAKE3 の既定 32-byte 出力 | e3b0c44298fc1c149afbf4c8996fb92427ae41e4649b934ca495991b7852b855 |
| 48 | 96 | 64 / 64 | SHA-384、SHA3-384、BLAKE2b-384 | 38b060a751ac96384cd9327eb1b1e36a21fdb71114be07434c0cc7bf63f6e1da274edebfe76f65fbd51ad2f14898b95b |
| 64 | 128 | 88 / 86 | SHA-512、SHA3-512、BLAKE2b-512、Whirlpool | cf83e1357eefb8bdf1542850d66d8007d620e4050b5715dc83f4a921d36ce9ce47d0d13c5d85f2b0ff8318d2877eec2f63b931bd47417a81a538327af927da3e |
「Base64 文字数」列の読み方: この列は = によるパディングを 含めた場合 / 省いた場合 の 2 通りを並べています。RFC 4648 の Base64 は 4 文字単位に揃えるため、生バイト長が 3 の倍数でないときだけ、末尾に = が 1〜2 個付きます。JWT や URL 埋め込みではこの = を落とす実装が多いので、同じ digest でも 43 文字と 44 文字の両方がありえます。逆に 48 バイトのように 3 の倍数のときはパディングが発生しないので、64 / 64 と同じ数字が並びます。長さで候補を絞るときは、必ず両方の数字と照らしてください。
ここで大事なのは、長さが一致しても方式は一意に決まらない ことです。
とくに 32 / 64 / 128 桁の 16 進は候補が多く、これだけで断定すると外しやすいです。
2.3 迷いやすい代表例
| 文字列の見え方 | ありがちな即断 | 実際の見方 | 例 |
|---|---|---|---|
5f4dcc3b5aa765d61d8327deb882cf99 |
MD5 で確定 | MD5 っぽいが、MD4 や NT ハッシュ、アプリ固有の MD5 利用もありうる | 8846f7eaee8fb117ad06bdd830b7586c |
2cf24dba5fb0a30e26e83b2ac5b9e29e1b161e5c1fa7425e73043362938b9824 のような 64 hex |
SHA-256 で確定 | SHA-256 候補ではあるが、SHA3-256 / SHA-512/256 / BLAKE2s-256 / BLAKE3 もありうる | e3b0c44298fc1c149afbf4c8996fb92427ae41e4649b934ca495991b7852b855 |
$6$rounds=5000$salt$hash |
SHA-512 の hex 表現 | そうではなく sha512crypt という password hash 文字列 | $6$rounds=5000$N3v8Kx2Lq9Rt$6LUcSUAELX3aC/.60pTB.TFLTQi1mOGRCwKqNCqtRSaXjorxj01HJ9oNni97Kci1uDt7a/Kn4t3OS20Dw/.vi1 |
{SHA}VBPuJHI7uixaa6LQGWx4s+5GKNE= |
何かの「SHA」 | Apache / LDAP 系では Base64 化した SHA-1 digest を指すことが多い | {SHA}VBPuJHI7uixaa6LQGWx4s+5GKNE= |
{bcrypt}$2b$12$... |
{bcrypt} という独自方式 |
Spring Security のラッパー付き bcrypt | {bcrypt}$2b$12$9YQ2u/e5Y/ArOnG.gJKxK.0makLATcYLP1q.Nsabzrw7XErYCfoYO |
3. 実務での判定手順
ここからは、実際にどう見るかを順番に整理します。 おすすめは prefix → 区切り → 文字種 → 長さ → 文脈 の順です。
3.1 まず先頭の記号を見る
最初の 1 文字から 10 文字くらいで、かなり絞れます。
-
$argon2id$/$argon2i$/$argon2d$Argon2 の PHC string format を強く疑います。構成要素は 2.1 の例列を見ると追いやすいです。 -
$2a$/$2b$/$2y$bcrypt を強く疑います。 -
$1$/$5$/$6$/$7$/$y$Unixcrypt(3)系の password hash を疑います。 -
{SHA}/{SSHA}/{MD5}/{SMD5}LDAP / Apache 系の表現を疑います。 -
{bcrypt}/{pbkdf2}/{scrypt}Spring Security のような 実装ラベル付き保存形式 を疑います。
ここでのコツは、「アルゴリズム本体」だけでなく「保存形式」も見る ことです。
たとえば $6$ は「SHA-512 の digest」ではなく、「SHA-512 を使った password hash 文字列」です。ここを取り違えると、その後の調査がずれます。
3.2 区切り文字の数を見る
次に、$, :, {}, ,, = のような区切りを見ます。
-
$が複数ある パラメータ、salt、hash を一緒に持つ形式を疑います。Argon2、bcrypt、sha256crypt、sha512crypt などが典型です。 -
{name}で始まる LDAP / Spring Security など、方式名を明示したラッパー を疑います。 -
algo:salt:hashやalgo$iterations$salt$hashのような形 フレームワークやアプリ固有形式を疑います。Django のpbkdf2_sha256$iterations$salt$hashはその典型です。
区切りが多い文字列ほど、方式を特定しやすい です。 逆に、ただの 16 進や Base64 が 1 塊で置かれているだけだと、かなり曖昧になります。
3.3 文字種を見る
文字種は、長さと同じくらい重要です。
16 進表現
[0-9a-fA-F] だけでできているなら、まずは 16 進表現を疑います。
この場合は 文字数 ÷ 2 = 生バイト長 です。
- 32 hex → 16 bytes
- 40 hex → 20 bytes
- 64 hex → 32 bytes
- 128 hex → 64 bytes
RFC 4648 の Base64 / Base64url
+ / = があれば、まず普通の Base64 を疑います。
- _ があれば Base64url を疑います。
padding の = が省略されることもあるので、43 / 44, 86 / 88 のような「両方ありうる長さ」を持ちます。
crypt 系の radix64
. と / が出てきて、しかも $...$ 区切りなら、普通の Base64 より crypt 系の alphabet を疑うほうが自然です。
bcrypt、sha256crypt、sha512crypt、md5crypt、yescrypt、scrypt などは、この系統の文字集合を使います。
ここは地味ですが、かなり効きます。
. が入っているから壊れた Base64 だ と見てしまうと、bcrypt や crypt(3) 系を見落としやすくなります。
3.4 長さを数える
文字種を見たら、次に長さです。 考え方は単純です。
- 16 進なら
生バイト長 = 文字数 / 2 - Base64 なら
文字数 ≒ 4 × ceil(生バイト長 / 3)ただし padding の=が省略されると 0〜2 文字短くなります
この段階で候補を絞ります。 ただし、64 hex を見て SHA-256 で確定、のような飛躍はしない ほうが安全です。
3.5 文脈で確定する
最後に効くのは文脈です。ここで 100% に近づけます。
-
/etc/shadowにある$y$,$6$,$5$,$1$など Linux の password hash 形式を疑う -
.htpasswdにある$apr1$,{SHA}, bcrypt など Apache 系を疑う -
Django の設定や
auth_user.passwordにあるpbkdf2_sha256$...やargon2$...のような Django 形式を疑う -
Spring Security の認証テーブルにある
{bcrypt}...や{pbkdf2}...のような{id}付き形式を疑う -
SMB / AD 連携まわりにある 32 hex NT ハッシュ(MD4 ベース)の可能性を強く考える
実務では、文字列そのものだけ見るより、保存元の製品・フレームワーク・設定ファイル名を見るほうが早い 場面が少なくありません。
4. よくある誤判定
4.1 64 hex = SHA-256 と決め打ちする
これはかなりありがちです。 もちろん SHA-256 は有力候補ですが、同じ 32-byte 出力を持つ方式は複数あります。SHA3-256、SHA-512/256、BLAKE2s-256、BLAKE3 の既定出力なども同じ長さです。
長さは候補群を作る材料であって、確定材料ではありません。
4.2 $6$ を plain SHA-512 と誤解する
$6$... は sha512crypt の prefix です。
これは「SHA-512 の hex digest」ではなく、salt や rounds を含む password hash 文字列 です。
同様に、
$5$は sha256crypt$1$は md5crypt
です。 prefix が付いている時点で、もう「ただの digest」ではありません。
4.3 {SHA} を「SHA-256 か SHA-512 のどれか」と思う
Apache や LDAP の文脈で {SHA} は、ふわっと「SHA 系」の意味ではありません。
多くの場合、Base64 化した SHA-1 digest を指します。{SSHA} は salted SHA-1 です。
{SHA} の見た目だけで「何かの SHA」と曖昧に扱うと、検証コードや移行処理を間違えます。
4.4 パスワードハッシュとコンテンツハッシュを同じものとして扱う
同じ「ハッシュ文字列」でも、目的が違います。
- ファイル整合性確認の digest
- API の署名用 digest
- パスワード保存用 hash / KDF 文字列
この 3 つは見た目が似ていても、扱いが違います。 とくに password hash は salt、rounds、memory cost、parallelism などを文字列に含むことが多く、「生 digest を比べる」発想では見抜けません。
4.5 XOF や可変長 digest を忘れる
SHAKE128 / SHAKE256 は XOF なので、出力長を自由に選べます。 BLAKE2 も digest length を変えられますし、BLAKE3 も extendable output を持ちます。
つまり、「この長さだからこの方式」 という推定は、固定長の古典的 digest を前提にしすぎると外します。
4.6 「NTLM」と「NT ハッシュ」を同じものとして扱う
これは用語の話ですが、Windows / AD まわりの調査ではかなり効きます。
- NT ハッシュ: パスワードを UTF-16LE でエンコードし、MD4 にかけた 16 バイトの値です。
8846f7eaee8fb117ad06bdd830b7586cのように、32 桁の 16 進として現れます。仕様上もNTOWFv1(Passwd, User, UserDom) = MD4(UNICODE(Passwd))と定義されています。この定義は、参考資料 13 に挙げた MS-NLMP の NTLM v1 Authentication の項にそのまま載っています。 - NTLM: その値を鍵にしてチャレンジ / レスポンスを行う 認証プロトコル の名前です。文字列の形式名ではありません。
現場では「NTLM ハッシュ」という言い方も通じますが、判定表に落とすときは NT ハッシュ(MD4 ベース) と書いたほうが正確です。ここを分けておくと、「この 32 hex は MD5 なのか NT ハッシュなのか」という 形式の判定 と、「この通信は NTLM なのか Kerberos なのか」という プロトコルの話 が混ざらずに済みます。
なお、NT ハッシュには salt がありません。同じパスワードなら常に同じ 32 hex になるので、「salt が付いていない 32 hex が AD 由来のテーブルに並んでいる」こと自体が手がかりになります。
5. 100% 確定したいときの確認順
移行や認証連携では、最終的に 確定 が必要です。そのときは次の順で見ると事故りにくいです。
5.1 保存元を特定する
まず、どこから来た文字列かを確定します。
- Linux の shadow か
- Apache / Nginx の basic auth か
- LDAP か
- Django / Spring Security か
- 独自アプリの DB か
文字列単体より、保存元の仕様 のほうが強いことが多いです。
5.2 公式ドキュメントで「保存形式」を調べる
次に、アルゴリズム名ではなく 保存形式 を調べます。
Django password formatSpring Security password storage formatcrypt(5) sha512crypt formatApache htpasswd password formats
のように、format / storage / encoding をキーワードにすると見つけやすいです。
5.3 既知の平文があるなら、候補方式で実際に照合する
テスト用アカウントや既知の平文があるなら、候補方式で実際に計算して比較するのが早いです。 このとき、password hash では salt や rounds を文字列から取り出して再計算 する必要があります。
手順の型は、どの方式でも同じ 3 段です。
- 文字列から salt とパラメータを取り出す
- 既知の平文に対して、同じ salt とパラメータで再計算する
- 出てきた文字列が、元の文字列と 完全一致するか を見る
prefix なしの digest を確かめる
まずは「ただの digest」からです。Python 3 の標準ライブラリだけで足ります。
# Python 3.8 以降 / 標準ライブラリのみ
import base64
import hashlib
target = "5f4dcc3b5aa765d61d8327deb882cf99" # 判定したい文字列
plain = b"password" # 既知の平文
for name in ("md5", "sha1", "sha256", "sha512", "sha3_256", "blake2s"):
digest = hashlib.new(name, plain).digest()
if digest.hex() == target.lower():
print("hex 一致:", name)
if base64.b64encode(digest).decode() == target:
print("base64 一致:", name)
この例なら hex 一致: md5 が出ます。2.2 の表で候補に挙げた方式を、そのまま for の中に並べていくのが基本形です。
NT ハッシュを試したくなったときは、hashlib.new("md4", "password".encode("utf-16-le")) のように書くことになりますが、OpenSSL 3 系にリンクされた Python では legacy provider が既定で無効なため、unsupported hash type md4 になることがあります。ここは先に手元の環境で確認しておいてください。
crypt 系のパスワードハッシュを確かめる
$1$ / $5$ / $6$ / $apr1$ は、openssl passwd に salt を渡せば再計算できます。2.1 の表に載せた例も、この方法で再現できます。
# OpenSSL 3.x
openssl passwd -6 -salt N3v8Kx2Lq9Rt password
# $6$N3v8Kx2Lq9Rt$6LUcSUAELX3aC/.60pTB.TFLTQi1mOGRCwKqNCqtRSaXjorxj01HJ9oNni97Kci1uDt7a/Kn4t3OS20Dw/.vi1
openssl passwd -5 -salt N3v8Kx2Lq9Rt password # sha256crypt
openssl passwd -1 -salt vA7mQ9xZ password # md5crypt
openssl passwd -apr1 -salt vA7mQ9xZ password # Apache APR1-MD5
出力が判定対象と一致すれば、その時点で 方式と平文の両方 が確定します。
rounds= が付いている文字列は、その値も一緒に渡す必要があります。$6$rounds=5000$... は既定値なので、明示してもしなくても同じ digest になりますが、rounds=100000 のように既定と違う値なら、必ずその値で計算してください。
Debian / Ubuntu 系なら、whois パッケージに入っている mkpasswd でも同じことができます(mkpasswd -m sha512crypt -S N3v8Kx2Lq9Rt password の形です)。
bcrypt や Argon2 を確かめる
bcrypt や Argon2 は salt が独自 alphabet でエンコードされているので、手で切り出すより、ライブラリの verify に文字列を丸ごと渡すほうが確実です。
# pip install "passlib[bcrypt]" argon2-cffi
from passlib.hash import argon2, bcrypt
samples = [
(bcrypt, "$2b$12$9YQ2u/e5Y/ArOnG.gJKxK.0makLATcYLP1q.Nsabzrw7XErYCfoYO"),
(argon2, "$argon2id$v=19$m=65536,t=3,p=4$MDEyMzQ1Njc4OWFiY2RlZg$uKZLaN6muIyoyIYr5waqw3y+zaDbe9aLSPj6Ln/rbz4"),
]
for handler, stored in samples:
# identify はその形式かどうか、verify は平文と一致するかを返します
print(handler.name, handler.identify(stored), handler.verify("password", stored))
verify は cost や rounds、salt を文字列側から読み取って再計算してくれるので、パラメータの取り出しを自分で書かずに済みます。上の bcrypt の例は平文が password なので True が返ります。
なお、Python 標準の crypt モジュールは非推奨化され、Python 3.13 で削除 されました。3.13 以降で crypt 系を扱うなら、openssl passwd か passlib 側へ寄せてください。
5.4 候補方式を hashcat の番号や john の名前へ置き換える
平文が分からず、ツール側で扱いたいときは、方式名ではなく ツールが使う識別子 に翻訳する必要があります。ここでよく詰まるので、代表的なものを表にしておきます。
| 見た目 | 方式 | hashcat のモード(-m) |
|---|---|---|
| 32 hex | MD5 | 0 |
| 32 hex(AD 由来) | NT ハッシュ | 1000 |
| 40 hex | SHA-1 | 100 |
| 64 hex | SHA-256 | 1400 |
| 128 hex | SHA-512 | 1700 |
$1$... |
md5crypt | 500 |
$apr1$... |
Apache APR1-MD5 | 1600 |
$2a$ / $2b$ / $2y$ |
bcrypt | 3200 |
$5$... |
sha256crypt | 7400 |
$6$... |
sha512crypt | 1800 |
pbkdf2_sha256$... |
Django PBKDF2-HMAC-SHA256 | 10000 |
| scrypt 系の保存形式 | scrypt | 8900 |
モード番号は版が上がるたびに増えるので、Argon2 や yescrypt のように新しめの方式は、手元の hashcat のヘルプに出る一覧で確認してください。
John the Ripper 側は数値ではなく 名前 で指定します。本体(1.8.0)で有効なのは descrypt、bsdicrypt、md5crypt、bcrypt、LM、AFS、tripcode、dummy、crypt で、これ以外の多くは jumbo 版で追加されます。使いたい方式の名前が本体にない場合は、jumbo 版のドキュメントで確認してください。
繰り返しになりますが、ここで挙げたツールは 自分たちの環境、または調査の許可が取れている環境 に対してだけ使ってください。
5.5 実装コードか設定を確認する
調査対象が自社システムなら、最終的にはコードや設定を見るのがいちばん確実です。
- 使用ライブラリ
- フレームワークの設定
- 生成時オプション
- 出力エンコード方式(hex / Base64 / Base64url / crypt alphabet)
ここを見れば、たいてい決着がつきます。
5.6 今後のために、方式ラベル付きで保存する
これから設計する側なら、方式を文字列に埋め込む形式 を選ぶと、将来の移行がかなり楽になります。
- Argon2 の PHC string format
- Spring Security の
{id}encodedPassword - Django の
algo$iterations$salt$hash - Unix
crypt(3)系の prefix 付き形式
こうしておくと、後から見た人が迷いにくいです。 逆に「ただの 64 hex」だけを DB に置く設計は、将来の自分にやさしくありません。
6. まとめ
ハッシュ値の文字列表現から方式を見分けるときは、次の順で見ると整理しやすいです。
- prefix があるか
- 区切り文字が何か
- 文字集合が何か
- 長さが何バイト相当か
- 保存元の文脈が何か
いちばん大事なのは、次の 2 点です。
- 接頭辞付きの保存形式はかなり特定しやすい
- プレーンな 16 進 / Base64 は候補群までしか分からないことが多い
なので、実務での判断はこうなります。
$argon2id$...,$2b$...,$6$...,{SHA}...,pbkdf2_sha256$...なら、文字列だけでかなり前に進める32 / 40 / 64 / 128桁の 16 進だけなら、断定ではなく「候補を絞る」と考える- 本当に確定が必要なら、保存元の製品・設定・実装まで見る
この順で見れば、調査がかなり速くなります。 逆に、長さだけで即断すると、静かに遠回りします。
7. このテーマがつながるサービス
技術相談・設計レビュー
既存 DB に残ったパスワードハッシュの方式特定、認証基盤の移行、Windows / Web 混在システムのログ調査では、文字列の見た目だけでなく、保存元の実装や移行方針まで整理する必要があります。方式特定から移行設計まで、まとめて見ると事故を減らしやすいです。
不具合調査・原因解析
「この文字列が何なのか分からないので検証が進まない」という調査は珍しくありません。ログ、設定ファイル、DB スキーマ、アプリ実装のどこで方式が決まっているのかを切り分けると、原因特定がかなり早くなります。
8. 参考資料
- RFC 1321 - The MD5 Message-Digest Algorithm
- NIST FIPS 180-4 - Secure Hash Standard (SHA-1, SHA-2, SHA-512/224, SHA-512/256)
- NIST FIPS 202 - SHA-3 Standard: Permutation-Based Hash and Extendable-Output Functions
- PHC string format specification
- Argon2 reference implementation
- RFC 7693 - The BLAKE2 Cryptographic Hash and Message Authentication Code (MAC)
- BLAKE3 C README - default output length and extendable output
- crypt(5) - prefixes and hashed passphrase formats
- Apache HTTP Server 2.4 - Password Formats
- slappasswd(8) - RFC 2307 schemes such as {SHA} and {SSHA}
- Django documentation - example of
pbkdf2_sha256$... - Spring Security -
DelegatingPasswordEncoderstorage format{id}encodedPassword - MS-NLMP: NTLM v1 Authentication -
NTOWFv1(Passwd, User, UserDom) = MD4(UNICODE(Passwd)) - hashcat wiki - example hashes(モード番号の一覧)
- John the Ripper - command line options(
--format=NAMEで使える名前) - passlib -
PasswordHashAPI(identifyとverify) - openssl-passwd(1) -
-1/-apr1/-5/-6と-salt
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技術相談・設計レビュー
既存システムのログ、DB、認証方式、保存形式を切り分けてハッシュ方式を特定し、移行や調査の判断を整理する用途に向いているため。
よくある質問
この記事のテーマについて、相談時によくある質問をまとめています。
- ハッシュ文字列から方式を見分けるにはどの順番で見ればよいですか?
- prefix → 区切り文字 → 文字種 → 長さ → 文脈の順で見ると整理しやすいです。先頭の数文字に意味がある形式は特定しやすく、$argon2id$ならArgon2、$2b$ならbcrypt、$5$はsha256crypt、$6$はsha512cryptを強く疑えます。逆に、prefixのないプレーンな16進やBase64は候補を絞るまでしかできないため、最終的には保存元の製品やフレームワーク、設定を確認して確定します。
- 64桁の16進文字列はSHA-256と断定してよいですか?
- 断定は危険です。SHA-256は有力候補ですが、同じ32バイト出力を持つ方式にはSHA3-256、SHA-512/256、BLAKE2s-256、BLAKE3の既定出力などもあり、長さだけでは区別できません。長さは候補群を作る材料であって、確定材料ではありません。確定が必要なら、保存元の仕様、公式ドキュメントの保存形式、既知の平文での照合、実装コードや設定の確認まで進める必要があります。
- $6$で始まる文字列はSHA-512のハッシュですか?
- 違います。$6$はsha512cryptというUnix系パスワード保存形式のprefixで、SHA-512のhex digestそのものではなく、saltやroundsを含むパスワードハッシュ文字列です。同様に$5$はsha256crypt、$1$はmd5cryptです。prefixが付いている時点で「ただのdigest」ではないため、ここを取り違えると移行や検証コードの実装がずれます。
- 文字の種類からは何が分かりますか?
- 文字種は長さと同じくらい重要な手がかりです。0-9a-fA-Fの範囲の文字だけなら16進表現で、文字数の半分が生バイト長になります。+ / = があればRFC 4648のBase64、- や _ があればBase64urlを疑います。ピリオドとスラッシュが出てきて$区切りなら、普通のBase64ではなくbcryptやsha512cryptなどcrypt系のalphabetを疑うほうが自然です。ピリオド入りを壊れたBase64と見てしまうと、crypt系形式を見落とします。